top of page
  • X
  • Facebook
  • Instagram

〈慶應義塾・上〉「KEIO日本一」から1年。新たな伝統を創る夏へ



夏の甲子園を制したあの興奮から1年が経とうとしている。「夏の王者」として注目を集めた昨秋は、準々決勝で桐光学園に0対4で敗戦。今春は準々決勝で横浜に4対9で敗れ、第二シードから夏の神奈川連覇に挑む。

(文/大利 実 写真/大利 実、BK編集部)



主将・加藤右悟が見つけた「自分らしさ」


 昨秋、桐光学園に敗れたあと、新主将の加藤右悟は取材を中断せざるをえないほど、泣きに泣いて、敗戦の責任を背負い込んだ。

 大会後、夏の優勝投手の小宅雅己は腰痛等で戦線を離脱し、左腕・鈴木佳門も左肩を痛め、実戦から遠ざかった。


 昨夏の歓喜から1年――-。

日本一に貢献した3人が悩み、もがきながら、最後の夏を迎えようとしている。

「秋に負けたあとが一番きつかった。日本一のチームが負けてしまって……」と振り返るのは加藤だ。

「正直、自分の中で完全に吹っ切れたのは、6月に入ってから。夏の大会が近づいてきて、『残り1カ月、みんなで決めたことをやろう!』という雰囲気になっています」

 月ごとに、選手主導で目標を決めているが、個々によって意識の差があり、継続してやりきれていない選手もいたという。

「森林さん(森林貴彦監督)から、『三流は計画して、二流は実行して、一流は継続する』という話を教えてもらって、一流になれるように取り組んでいるところです」


 昨秋の取材では、「僕は大村さん(大村昊澄/慶應義塾大)のようにはなれない」と語っていたが、理想のキャプテン像はどこにあるか。

「学生コーチに、『右悟らしくやっていれば、みんなを巻き込めるから』と言ってもらって、いいことを言わなきゃいけないとか考えるのをやめました。思ったことをどんどん口にして、行動していけば自分らしさが出る。そうやって、周りの人を巻き込むのが自分の色なのかなと思っています」


チームを支える栃木トリオ


 取材時に加藤、小宅、鈴木の3ショットをお願いすると、「栃木勢じゃん」と笑みがこぼれた。



昨夏、甲子園優勝を経験した栃木出身の3人(左から鈴木、加藤、小宅)。チームを勝利に導くプレーを見せる


 加藤と小宅は県央宇都宮ボーイズのバッテリーとして、中学3年の春に日本一を経験。鈴木は軟式の「ALL栃木」の左のエースとして、全日本少年準優勝を成し遂げている。

 鈴木が通っていた那珂川町立小川中は学年2クラスの小規模校。はじめは、学校でも野球部でも人の多さに面食らったという。

「いろんな人がいて、怖くて(笑)。加藤や小宅が一緒に栃木から来たこともあってか、コミュニケーションを取ってくれて、それがすごく助かりました」

 左肩のコンディションは回復傾向にあり、「夏はもちろん投げるつもりです。今できるベストのピッチングをしたい」と意気込む。


 小宅は「7月中旬」にピークを持っていくため、投げ込みの量を増やしている。

「カットボールのキレは上がっているので、あとはストレート。昨年の良かった頃の感覚は自分の中でわかっているので、そこに近付けていければと思っています。今のチームにはまったく貢献できていないので、夏はやり切って終わりたいです」

 6年間チームメイトの加藤に、「小宅への期待を」と振ると、「期待しないでおきます」と笑顔で答えた。

「小宅も大変だと思うので。一番近い存在である自分が、『大丈夫だよ』という感じで待ってあげられたらと思っています」

 愛情を感じる言葉だった。



復活を期すエースの小宅。「悔いなくやり切りたい」と夏の抱負を語る



bottom of page